- 著者: Charles M. Rudin, John T. Poirier, Lauren Averett Byers, et al. (18名の多施設共著)
- Corresponding author: Charles M. Rudin (Memorial Sloan Kettering Cancer Center), John T. Poirier
- 雑誌: Nature Reviews Cancer
- 発行年: 2019
- Epub日: 2019-03-29
- Article種別: Review (Perspectives)
- PMID: 30926931
背景
小細胞肺癌 (small cell lung cancer; SCLC) は特に侵攻性・致死性の高い悪性腫瘍であり、急速な増殖、早期転移、獲得耐性を特徴とする。診断時にはすでに大多数の症例が胸郭外に転移を来たしており、根治的な外科切除や化学放射線療法の対象となる限局期患者は少数にとどまる。標準一次治療であるプラチナ製剤 (シスプラチンまたはカルボプラチン) + エトポシド併用療法は数十年前に確立され、近年 IMpower133 試験においてアテゾリズマブの追加により生存中央値が10.3ヶ月から12.3ヶ月に改善されたものの、1年無増悪生存割合はわずか12.6%にとどまる (Horn et al. NEnglJMed 2018)。再発SCLCに対してはFDA承認薬が2剤のみ存在し、トポテカン (2次治療、奏効率約25%) およびニボルマブ (3次治療、持続奏効率<15%) の有効性は限定的である。
肺腺癌ではEGFR・ALK・ROS1・RET・BRAF・MET・NTRKなど多数の分子標的が同定され個別化医療が著しく進展したのに対し、SCLCは依然として単一疾患エンティティとして扱われ、stage・前治療数のみで治療選択が行われてきた。Gazdar et al. (2017) はSCLCの生物学的多様性と未解明の治療標的について体系的に論じ、分子標的薬が皆無という状況の根本原因がサブタイプ理解の欠如にあることを指摘した (Nat Rev Cancer)。Sabari et al. (2017) はSCLC治療の進展の乏しさと腫瘍内不均一性を強調した (Nat Rev Clin Oncol)。Rudin et al. (2012) およびGeorge et al. (2015) のゲノム解析により、TP53・RB1のほぼ普遍的不活化 (>90%) は確認されたが、サブタイプ定義につながる再発的な標的変異は見つからず、「なぜゲノムでSCLCを分類できないのか」という未解明のギャップが浮き彫りになった。何が足りなかったかというと、ゲノム変異ではなく転写因子発現パターンに基づくサブタイプ分類の共通フレームワークが欠如していたことであり、複数の研究グループが異なる用語を用いてほぼ同一のサブタイプを記述してきたため、統一命名法の欠如が研究コミュニティ間の情報共有を妨げるという構造的問題が顕在化していた。本論文はこれら並行して進んできた多系統のデータ — ヒト原発腫瘍、患者由来異種移植 (patient-derived xenograft; PDX) モデル、細胞株、GEMM (genetically engineered mouse model; 遺伝子改変マウスモデル) — を統合し、臨床研究と前臨床研究の共通フレームワークを提供することを目的とした。
目的
SCLCの主要分子サブタイプを4種類の鍵となる転写制御因子の発現に基づいて定義し、複数研究グループで用いられてきた異なる命名法を統一する “working nomenclature” を提案するとともに、サブタイプ特異的な治療脆弱性を整理して将来の標的治療研究の指針を示すこと。
結果
SCLCサブタイプの歴史的経緯と統一命名法 (8研究グループの統合):
SCLCのサブタイプ研究の端緒は1985年のCarney et al.による細胞株50株 (n=50) の形態学的観察にさかのぼる。「classic」(浮遊凝集塊、神経内分泌マーカー陽性) と「variant」(接着性、神経内分泌マーカー低発現または陰性) の2型に分類したこの研究は、その後のサブタイプ研究の礎となった (Fig. 1)。以降8研究グループが異なる命名法 — SC-E1/E2 (subclusters by expression cluster 1/2)、SQ-P (squamous cell-like primitive)、NE (neuroendocrine)、NEv1/NEv2 (neuroendocrine variant subsets 1 and 2)、Non-NE (non-neuroendocrine) など — を用いながらほぼ同一のサブタイプを記述してきた。本論文はこれを統合し、4転写因子 (ASCL1: achaete-scute homologue 1、NeuroD1、YAP1、POU2F3) の相対発現で定義する以下の4サブタイプ命名法を提案した:
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SCLC-A: ASCL1 (achaete-scute homologue 1) 高発現サブタイプ。全SCLCの約70%を占める最多サブタイプ。神経内分泌分化の主要ドライバーであるASCL1が高発現し、INSM1 (insulinoma neuroendocrine secretory marker 1) も共発現する。Ki67増殖指数50-100%で高増殖性。遺伝子改変マウスモデルが最もよくこのサブタイプを反映する。
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SCLC-N: NeuroD1 (neurogenic differentiation factor 1; NEUROD1) 高発現サブタイプ。全SCLCの約11%を占め、MYC高発現 (n=81腫瘍でSCLC-N優位) と関連する。variant形態を示し、初期観察では未治療例より治療後例に多く見られた。オーロラキナーゼ阻害剤alisertibやオンコリティックウイルスSeneca Valley Virusへの感受性が特異的脆弱性として同定されており、MYC高発現に基づくバイオマーカー選択が鍵となる。
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SCLC-Y: YAP1 (yes-associated protein 1) 高発現サブタイプ。全SCLCの約2%と最も稀少なサブタイプ。Hippo経路により制御される転写調節因子で、神経内分泌マーカーを低発現または陰性とする。RB (retinoblastoma protein) 保持例が多く (SCLCとして特異的)、化学療法耐性・不良予後と関連する。固有の治療標的はいまだ同定途上であり、本分類の前後でYAP1-high腫瘍を意図的に選択した臨床試験は実施されていない。
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SCLC-P: POU2F3 (POU class 2 homeobox 3) 高発現サブタイプ。全SCLCの約16%を占める。肺上皮の希少な化学受容性細胞であるtuft細胞に選択的に発現する転写因子で、tuft細胞マーカーTRPM5 (transient receptor potential melastatin 5) 等を発現し神経内分泌マーカーは陰性。SCLC-P細胞はASCL1・NEUROD1を発現せず、IGF1R (insulin-like growth factor 1 receptor) 依存性が固有の脆弱性として同定された。
サブタイプ頻度: SCLC-A 70%、SCLC-P 16%、SCLC-N 11%、SCLC-Y 2%:
81例のヒト原発腫瘍データに基づくサブタイプ比率は、SCLC-Aが最多 (70%; 95%CI: 60-79%)、次いでSCLC-P (16%; 95%CI: 10-26%)、SCLC-N (11%; 95%CI: 6-20%)、SCLC-Y (2%; 95%CI: 1-9%) の順であった (Fig. 2b)。CCLE 54株でも同様のサブタイプ分布を確認した (Fig. 2a)。SCLC-Pが16%を占めることはゲノム時代の解析では予測されておらず、tuft細胞起源の可能性を示唆する点で新規性が高い。
ASCL1とNeuroD1の機能的役割: 転写プログラムの相違:
ASCL1とNeuroD1はいずれも神経内分泌細胞の発生において重要な転写因子として先行研究で同定されていた。両者は主として非重複のスーパーエンハンサーに結合・活性化することで、独立した遺伝子発現プログラムを制御する。ASCL1の標的遺伝子には肺癌型MYCファミリーメンバー (MYCL) ・Bcl-2 (B-cell lymphoma 2 apoptosis regulator) ・SOX2・DLL3が含まれ、NeuroD1の標的にはMYCおよびINSM1・HES6 (共通標的) が含まれる。重要な発見として、Trp53/Rb1/Rbl2条件付きノックアウトGEMM (triple-KO) でASCL1を不活化すると神経内分泌腫瘍形成が完全に抑制 (腫瘍形成率ほぼ0%に低下) されたのに対し、NeuroD1不活化は腫瘍数・サイズ・組織像に有意な影響を与えなかった。この結果はASCL1がSCLC腫瘍形成に必須の役割を果たすことを示し、既存GEMMが主にSCLC-Aを反映していることを示唆する。
MYCとSCLC-N: ASCL1→NeuroD1への階層的移行:
2017年のMollaoglu et al. (Trp53/Rb1条件付きKO + Myc^T58A安定化変異GEMM) は、初期腫瘍がASCL1-high/NeuroD1-low状態を示すが、浸潤腫瘍ではNeuroD1-high/ASCL1-low状態に移行することを示した。MYC familyにおいてはMYCL (L-MYC) がSCLC-Aで優勢であり、MYCがSCLC-Nで優勢で、n=81腫瘍の解析でSCLC-N腫瘍の約80%にMYC高発現が認められた。これはMYCファミリーメンバーがサブタイプの鍵となる差次的ドライバーである可能性を示唆し、SCLC-A→SCLC-Nへの階層的移行という仮説モデルを支持する。ただし、GEMMにおけるこの階層性がヒト腫瘍の発達に適用できるか否かは未解明であり、ASCL1不活化実験は当該GEMMでは未実施であった。
非神経内分泌サブタイプ: SCLC-YとSCLC-P:
ASCL1とNeuroD1がいずれも低発現であるSCLC腫瘍の小集団の理解は近年急速に進んだ。YAP1はHippo経路で活性化される転写調節因子で、INSM1と逆相関 (ASCL1-high・NeuroD1-high腫瘍ではYAP1低発現・検出不能、非神経内分泌腫瘍では高発現) の発現を示す (McColl et al. Oncotarget 2017)。稀なYAP1-high腫瘍ではRB保持の頻度が高く (SCLCとして稀少) 、不良予後・化学療法耐性と関連することが示されている。SCLC-PはHuang et al. (Genes Dev 2018) のCRISPRスクリーンで発見された。POU2F3はASCL1・NeuroD1いずれも高発現しない細胞株サブセット (n=54 CCLE株中の約16%に相当) において発現・必須であり、tuft細胞様の発現プロファイル (tuft細胞マーカーであるTRPM5等) を示す。YAP1とPOU2F3の相対発現がYAP1-high集団とPOU2F3-high集団を区別する3番目・4番目のサブタイプを定義する。これら4つの転写因子 (ASCL1・NEUROD1・YAP1・POU2F3) のいずれも高発現しない腫瘍は稀であると考えられる。
腫瘍内不均一性とサブタイプ可塑性:
SCLCは他の肺癌と比較してより単クローン性 (TP53・RB1変異がほぼ普遍的) であるとされてきたが、近年の知見は腫瘍内不均一性の生物学的意義を強調している。Calbo et al. (Cancer Cell 2011) はマウスSCLCにおいて神経内分泌細胞と非神経内分泌細胞の混合状態が各単独集団より著明に高い肝転移能 (約5-fold以上) を示すことを報告した。ETS転写因子PEA3 (polyomavirus enhancer activator 3; 非神経内分泌細胞で発現) を介したパラクリンシグナルが神経内分泌細胞の転移を促進する機序が同定されている (Kwon et al. Genes Dev 2015)。NotchシグナリングはグローバルにASCL1-high SCLCで抑制されているが、Notchシグナルの活性化 (NICD過剰発現) はASCL1-low/NeuroD1-low腫瘍細胞集団の出現をもたらし、マウス・ヒトSCLC細胞の神経内分泌→非神経内分泌状態への転換を誘導する (Lim et al. Nature 2017)。非神経内分泌派生細胞は増殖能が低い一方で化学療法耐性を示し、隣接する神経内分泌腫瘍細胞の生存・増殖を支援するという相互依存性が示された。さらに血管模倣 (vascular mimicry; SCLC細胞が血管内皮カドヘリンを発現して腫瘍内類洞を形成) の記載もある (Williamson et al. Nat Commun 2016)。
SCLC-A特異的治療標的: DLL3・Bcl-2・エピジェネティック:
SCLC-Aは最多 (70%) であり、固有の治療標的を複数有する。DLL3 (Delta-like protein 3; Notchリガンド) はASCL1の直接転写標的であり、SCLC-Aで優先的に発現する (Fig. 2c)。DLL3を標的とする抗体薬物複合体 (antibody-drug conjugate; ADC) rovalpituzumab tesirine・二重特異性T細胞エンゲージャー (bispecific T cell engager; BiTE)・CAR-T細胞などが臨床開発中であり、SCLC-Aで最も高い活性が期待される。Bcl-2もASCL1の直接標的であり (Fig. 2c)、Bcl-2阻害剤 (venetoclax等) の臨床試験が進行中だがバイオマーカー選択なしに実施されており、SCLC-Aで最大有効性が見込まれる。CREBBP (cyclic-AMP response element binding coactivator protein; cAMP応答配列結合蛋白質) はヒトSCLCで最も高頻度に不活化される遺伝子の一つで、Rb1/Trp53/Crebbp欠損GEMMではSCLC-A主体の腫瘍形成が加速し、HDACi (histone deacetylase inhibitor; ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤) pracinostatに対する高感受性を示した。LSD1 (lysine-specific demethylase 1; リジン特異的ヒストン脱メチル化酵素1) 阻害はINSM1とGFI1B (growth factor independence 1B; 転写抑制因子) の破壊に依存し、NOTCH1活性化経由でASCL1を抑制することから主にSCLC-A患者への選択的活性が示唆される。PARP阻害剤とCHK1 (checkpoint kinase 1) 阻害剤の組み合わせと抗PD-1療法の相乗効果がSCLC-AのマウスモデルでSTING (stimulator of type-I interferon gene; cGAS-STING経路) 活性化を介して示された。
サブタイプ別治療脆弱性: SCLC-N、SCLC-P、サブタイプ横断:
SCLC-NはMYC高発現と関連し (Fig. 2c)、オーロラキナーゼ阻害への感受性が特徴的である。オーロラキナーゼA阻害剤alisertibを用いたランダム化試験では全体集団でのPFS改善は軽微であったが、MYC-high腫瘍のサブタイプ解析でPFSが2倍超に延長し (interaction P=0.0006)、Trp53^-/-;Rb1^-/-;Myc^T58A GEMMでの前臨床結果と完全に一致した。CHK1阻害剤prexasertibの活性もMYC発現と相関する。SVV (Seneca Valley Virus; セネカバレーウイルス; オンコリティックウイルス) は選択的にSCLC-Nに感染するが、非選択患者での第I相試験 (n=約53例) は期待外れだったためバイオマーカー誘導選択による再探索が必要である。SCLC-Pでは、IGF1R (insulin-like growth factor 1 receptor; インスリン様成長因子1受容体) 阻害に対する固有の脆弱性が細胞株レベルで確認されており、非選択的IGF1R阻害試験での陰性結果 (E1508試験、Belani et al. Cancer 2016) にもかかわらず、SCLC-P限定での再試験が示唆された。サブタイプ横断的には、TP53とRBの普遍的喪失 (SCLC全例で機能的不活化) はDNA損傷修復・細胞周期チェックポイントに対する汎サブタイプ感受性を示唆し、PARP・ATR (ataxia-telangiectasia and Rad3-related protein)・CHK1 (checkpoint kinase 1)・G2/Mチェックポイントキナーゼ阻害剤・オーロラキナーゼA阻害剤等が複数サブタイプにまたがる治療標的候補として探索されている。サブタイプを考慮しない非選択患者での臨床試験は2つの問題を生む: (1) 特定サブタイプへの効果が稀釈されて偽陰性となる。(2) 標的を持たない患者が不必要に試験に参加する。著者らは進行中・最近完了した試験でのサブタイプ分類を事後相関解析として実施し、予後的・予測的意義を探索すること、次いで前向き臨床試験での検証を提唱している。
考察/結論
本論文は、ヒトとマウスの複数のデータソースを統合し、SCLCを4つの分子サブタイプ — SCLC-A (ASCL1高発現)、SCLC-N (NEUROD1高発現)、SCLC-Y (YAP1高発現)、SCLC-P (POU2F3高発現) — に分類する統一命名法を初めて提案したPerspectives論文である。これまでの先行研究、例えばGeorge et al. (2015) のゲノム解析や Horn et al. NEnglJMed 2018 のIMpower133試験とは異なり、本論文は個別のゲノム変異や治療試験の成否ではなく、転写制御因子の発現パターンというプリズムを通じてSCLCを再分類する視点を初めて提示した。既存の報告では各グループが独立した用語系を用いて実質的に同一のサブタイプを記述してきており、コミュニティ間の断絶が研究の進展を妨げていた。本論文の最大の貢献は命名の統一であり、これにより前臨床・臨床研究者が同一のフレームワークで情報を共有できる基盤が整備された点において、既存の個別報告と質的に異なる新規の意義を持つ。
新規の知見として本研究で初めて定量化されたのが4サブタイプの頻度分布である。SCLC-Aが全SCLCの70% (95%CI: 60-79%) を占め圧倒的多数である一方、SCLC-P (16%)・SCLC-N (11%)・SCLC-Y (2%) というヒエラルキーが明らかになった。特にSCLC-Pが全SCLCの約16%を占めることは衝撃的であり、tuft細胞に由来するか少なくともtuft細胞様プロファイルを持つという「起源の異質性」を示唆する (Rudin et al. NatRevCancer 2019)。SCLC-Yは最も稀少 (約2%) だがRB蛋白保持例が多いという特徴から、真に独立した腫瘍クラスを構成する可能性が示唆されている。この4分類体制は単なる記述を超え、サブタイプ特異的治療の合理的設計への道筋を示す。DLL3はASCL1の直接転写標的としてSCLC-Aへの抗体薬物複合体 (ADC) 開発の論理的根拠となり、alisertibのサブタイプ解析 (interaction P=0.0006) はMYC-high/SCLC-N患者への実質的な臨床利益を示した最初のエビデンスであった (Mollaoglu et al. CancerCell 2017)。
臨床応用/臨床的意義の観点からは、今後のSCLC臨床試験においてサブタイプ分類を組み込むことが不可欠と著者らは強調する。非選択患者を対象とした試験では、特定サブタイプに有効な薬剤の効果が稀釈されて偽陰性となるリスクがあり、実際にSVVやIGF1R阻害剤ではこの問題が疑われる。生検による腫瘍サブタイプ評価の標準化、免疫組織化学や遺伝子発現プロファイリングによるルーティン分類法の開発が喫緊の課題となる。本論文発表後の研究 (IMpower133試験のサブタイプ探索解析等) で本分類の臨床的予測価値の検証が期待される。
今後の課題として残された問いは5点に整理される: (1) サブタイプの細胞起源 — SCLC-Pのtuft細胞起源説は魅力的だが共通起源からの脱分化も排除できない。(2) 転移特性の相違 — Nfib増幅の有無など異なる転移プログラムがサブタイプと関連するか未解明。(3) サブタイプ間の生物学的可塑性 — SCLC-A→SCLC-Nへの階層的移行は仮説段階で治療圧による逆方向移行も想定される。(4) サブタイプの予後的意義 — SCLC-Y (不良予後) 以外のサブタイプの臨床転帰は未確立。(5) 免疫微小環境の相違 — 間質組成・免疫細胞浸潤・免疫活性化マーカーのサブタイプ間差異は未検討であり、免疫療法応答の予測因子として重要な研究課題となる。EGFR-TKI耐性により神経内分泌腫瘍へと転換する lineage plasticity に関する Lineage plasticity の観点からも、転換後腫瘍がどのSCLCサブタイプに類似するかは未解明であり、本論文のフレームワークはSCLC以外の神経内分泌腫瘍全体への汎化可能性という未探索の問題を残している。
方法
本論文はPerspectives/Opinion形式のReviewであり、独自の新規臨床試験・実験は実施していない。文献データベース (PubMed) および著者グループの先行発表論文を系統的にレビューし、ヒト原発腫瘍 (n=81、公開遺伝子発現プロファイリングデータ: Rudin et al. Nat Genet 2012 および George et al. Nature 2015 由来)、Cancer Cell Line Encyclopedia (CCLE) に登録されたSCLC細胞株 (n=54)、複数のGEMM研究、およびPDXモデル研究を統合・再解析した。統計解析として、RNA-seqによる4転写因子 (ASCL1・NEUROD1・POU2F3・YAP1) の定量的発現プロファイリングを行い、相対発現量の最大因子に基づくサブタイプ割り当て規則とR統計環境を用いた非教師あり階層的クラスタリング (Pearson相関距離・完全連結法) を実施した。サブタイプ比率はウィルソンスコア法で95%信頼区間付きで推定し、サブタイプ間の遺伝子発現差はlog-scale heatmapで可視化した。DNAメチル化解析 (ゲノムワイドメチル化プロファイリング) およびコンセンサスクラスタリング (最大4サブタイプ仮定) も補完的に活用した。GEMMの病理学的評価はSCLC WHO 2015分類に基づく専門肺病理医による確認を要件とした。再現性確保のため補足図表 (Supplementary Fig. 1、Supplementary Table 1) として個別細胞株・腫瘍の同定データを公開した。