- 著者: Shaw AT, Gandhi L, Gadgeel S, Riely GJ, Cetnar J, West H, Camidge DR, Socinski MA, Chiappori A, Mekhail T, Chao BH, Borghaei H, Gold KA, Zeaiter A, Bordogna W, Balas B, Puig O, Henschel V, Ou SI, et al.
- Corresponding author: Alice T Shaw (Massachusetts General Hospital, Boston, MA)
- 雑誌: Lancet Oncology
- 発行年: 2016
- Epub日: 2015-12-18
- Article種別: Original Article (Phase 2 single-group multicentre trial)
- PMID: 26708155
背景
EML4-ALK融合遺伝子はNSCLC全体の3-7%を占める distinct な分子サブタイプであり、Soda らがNature 2007で同定して以降 (Soda et al. Nature 2007)、ALK陽性NSCLCに対する分子標的療法開発の中心的標的となってきた。第一世代ALK阻害薬crizotinibは Kwak et al. NEnglJMed 2010 による初期臨床試験で活性が示され、続くphase 3試験ではpretreated例でORR 65%・PFS 7.7ヶ月、first-line例でORR 74%・PFS 10.9ヶ月という標準化学療法を凌駕する成績が報告された (Shaw et al. NEnglJMed 2013; Solomon et al. NEnglJMed 2014)。
しかし大多数の患者がcrizotinib開始から1年以内に再発し、その最も頻繁な再発部位がCNSであることが明らかとなった。Crizotinibは P-glycoprotein 基質であるため血液脳関門通過が乏しく、髄液中薬物濃度は血漿濃度の約1%程度に留まる。さらに全身病変での耐性機序として、Leu1196Met (L1196M、gatekeeper mutation) や Gly1269Ala (G1269A) などのALKチロシンキナーゼドメイン二次変異、ALK融合遺伝子増幅、EGFR (epidermal growth factor receptor) /IGF-1R (insulin-like growth factor 1 receptor) /SRC (proto-oncogene tyrosine-protein kinase Src) などのbypass経路活性化が報告されているが、これらに対し有効な後治療戦略は未確立であった (Choi et al. NEnglJMed 2010; Katayama et al. SciTranslMed 2012)。
このギャップを埋めるべく開発されたalectinibはP-glycoprotein非基質で CNS活性が高い高選択的ALK阻害薬であり、phase 1試験では全身ORR 55%、CNS ORR 52%が示されていた (Gadgeel et al. LancetOncol 2014)。しかし phase 1 では症例数が限定的で頭蓋内活性の頑健性検証が不足しており、また crizotinib耐性例に絞った大規模phase 2エビデンスも手薄であった。本研究はこの不足を埋めることを目的とする。
目的
米国・カナダの27施設で進行・転移性のcrizotinib耐性ALK陽性NSCLC患者に対し、alectinib 600 mg 1日2回投与の有効性 (全身・頭蓋内) と安全性を独立評価委員会 (IRC) 評価で前向きに検証する。
結果
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対象と背景特性 (Table 1) :2013年9月-2014年8月に125例がスクリーニングされ87例が登録された (intention-to-treat集団)。年齢中央値54歳 (29-79)、女性55%、白人84%、never smoker 62%、stage IV 99%、腺癌94%、ECOG PS 0-1が90%。Baseline CNS転移は52例 (60%) で存在し、うち34例 (65%) は脳放射線治療既往あり、16例 (47%) は照射から6ヶ月以上経過していた。化学療法歴は64例 (74%) にあり、crizotinib最終投与からalectinib開始までの中央値は15日 (IQR 10-33) (Table 1)。Screening脱落38例の主な理由は腎機能不足5例、ALK再陳列陰性3例、有症候/治療要する脳髄膜転移3例。
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IRC評価全身奏効率 48% を確認 (primary analysis) (Fig 1) :追跡中央値4.8ヶ月時点で69例 (response-evaluable) のうち33例が確定partial responseを達成し、ORRは48% (95% CI 36-60%) であった (Fig 1)。Stable disease 22例 (32%)、progressive disease 11例 (16%)、評価不能3例 (4%)。Investigator評価では87例中40例 (46%, 95% CI 35-57%) が奏効。Updated analysis (追跡中央値9.9ヶ月、Fig 2) ではIRC評価ORR 52% (35/67例, 95% CI 40-65%)・investigator評価ORR 51% (44/87例)。
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DOR 13.5ヶ月・PFS 8.1ヶ月の長期奏効持続性 (Fig 3) :Updated analysisにおけるDOR中央値13.5ヶ月 (95% CI 6.7-not estimable) で、奏効35例のうち21例 (60%) がdata cutoff時点でcensoredと長期持続を示唆した。PFS中央値8.1ヶ月 (95% CI 6.2-12.6) で38例 (44%) がcensored (Fig 3)。Data cutoff時点で24例死亡、12ヶ月OS率 71% (95% CI 61-81%)。これらは crizotinib first-line PFS 10.9ヶ月 (Solomon et al. NEnglJMed 2014) と比較しsecond-line設定として臨床的に有意な持続効果である。
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頭蓋内有効性 (Fig 4) :baselineでRECIST測定可能CNS病変を有する16例での頭蓋内ORRは75% (95% CI 48-93%) で、CR 4例 (25%)、PR 8例 (50%)、DOR中央値11.1ヶ月 (95% CI 5.8-11.1)、disease control 16/16例 (100%, 95% CI 79-100%) と極めて高率の頭蓋内活性が確認された (Fig 4)。測定可能・非測定可能を合わせたCNS病変52例での頭蓋内ORRは40% (21例, 95% CI 27-55%、うちCR 13例 25%)、頭蓋内disease control 89% (46例, 95% CI 77-96%)。脳放射線未治療18例でも頭蓋内ORR 67% (12例) で、うち10例はCR、5例がstable diseaseで放射線非依存の頭蓋内活性を示した。
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CNS進行プロファイル (Fig 5) :累積発症関数によるCNS進行イベントは非CNS進行イベントより少なく、ceritinib (脳/血漿曝露比 ~15%) や crizotinib (Shaw et al. NEnglJMed 2014 でceritinib頭蓋内ORR 29% と対照的) を上回るBBB透過性を裏付けるパターンであった (Fig 5)。CNS非進行/CR維持は累積発症関数上で持続的に観察された。
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安全性プロファイル (Table 2) :事象の大半はGrade 1-2で、最頻は便秘 31例 (36%)、倦怠感 29例 (33%)、筋肉痛 21例 (24%)、末梢浮腫 20例 (23%)。Grade 3-4の最頻は検査値異常: 血中CPK上昇 7例 (8%)、ALT上昇 5例 (6%)、AST上昇 4例 (5%)、貧血Grade 4 1例、低カリウム血症Grade 3 2例 (2%) など (Table 2)。Serious AE 13例 (15%)、死亡2例 (出血1例 [抗凝固剤併用、治療関連と判定]、進行+脳卒中既往1例 [非関連])。Interstitial lung disease/pneumonitisは0例で肝不全0例。Dose interruption 31例 (36%)、dose reduction 14例 (16%)、AEによる中止2例 (2%) のみで、mean dose intensity 92% (SD 14) と高い忍容性を示した。
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EORTC QLQ-C30/QLQ-LC13 で6週時点から臨床的有意改善:EORTC (European Organisation for Research and Treatment of Cancer) QLQ-C30 質問票による全般的健康状態スコアは治療開始6週時点でベースラインから10点以上の臨床的に意味のある改善を示し、その後の連続2回以上の評価で維持され治療終了まで継続的に保たれた。これは clinically meaningful improvement の標準閾値である10点を Cohen 基準で上回るもので、87例中過半数で達成された。QLQ-LC13 (lung cancer module) では13項目中とくに倦怠感サブスケールで baseline からのスコア低下 (症状改善方向) が認められ、咳・呼吸困難・胸痛のサブスケールも安定または改善の方向性を示した (appendix p 3)。Crizotinib耐性後の二次治療として QOL を悪化させずに長期投与可能なプロファイルが、グラデーション付き scale で客観的に裏付けられた。
考察/結論
① 先行研究との違い: 本試験の頭蓋内ORR 75% (測定可能CNS病変16例) は ceritinibの頭蓋内ORR 29% (Shaw et al. NEnglJMed 2014) や crizotinib first-line化学療法対照試験での頭蓋内disease control 56%-85% (Solomon et al. NEnglJMed 2014) とは異なり、これまで報告されたあらゆる次世代ALK阻害薬を上回る数値である。DOR中央値13.5ヶ月もceritinib 8.2ヶ月、brigatinib 9.3ヶ月と対照的に長期持続を示し、消化器毒性が顕著なceritinib (ALT G3/4 27%、減量率過半) と異なりalectinibはGrade 3/4のALT上昇が6%にとどまる。これまでの ALK 第二世代薬剤に共通していた gastrointestinal toxicity burden を構造的に低減した点が differs from previous agents である。
② 新規性: 本研究はcrizotinib耐性ALK陽性NSCLCの 比較的大規模なphase 2 (n=87) で alectinib の頭蓋内活性を本研究で初めて prospective かつ独立評価委員会評価で系統的に検証 した点が新規な貢献である。特にこれまで報告されていない、未照射CNS病変例 (18例) における CNS ORR 67% (CR 10例) は、放射線治療なしに化学放射線療法に頼らず alectinib 単剤で intracranial complete response が再現的に達成可能であることを novel に示した。CNS-active TKI の薬物動態的根拠 (P-glycoprotein 非基質、CSF Ctrough が unbound systemic Ctrough にほぼ等しい) と臨床ORR データを first to demonstrate 規模で連結した。
③ 臨床応用: AlectinibはCrizotinib耐性ALK陽性NSCLCに対する後治療として、特にCNS転移を有する患者群で臨床応用が即座に正当化される。本研究の臨床的有用性は、(a) Grade 3-4 AEの大半が無症候性の検査値異常で全身状態を悪化させない、(b) 用量強度92%維持で長期投与に適する、(c) QOL指標が6週時点で改善、の3点に集約される。これは臨床現場での「crizotinib → 化学療法 → 全身/CNS進行で予後不良」という従来の sequence を「crizotinib → alectinib → 持続CNS制御」へと再定義し、ALK陽性NSCLCのbench-to-bedside治療開発における橋渡しとして、FDA breakthrough therapy designation の根拠となった。
④ 残された課題: 今後の検討事項として、(i) 個別の crizotinib 耐性変異 (Gly1202Arg (G1202R) 、Ile1171 (I1171) など alectinibが前臨床で活性を示さない変異) に応じた次世代ALK阻害薬選択戦略が未確立であり、本試験では生検が必須化されていなかったため alectinib の耐性変異プロファイル別効果は限定的である (Crystal et al. Science 2014)。(ii) 次世代ALK阻害薬間の直接比較ランダム化試験が存在せず、ceritinib・alectinib・brigatinib・lorlatinibの最適 sequencing は 今後の研究を要する。(iii) Alectinib耐性後の治療選択肢開発が今後の方向性として求められ、特にIGF-1RやSRCなどbypass経路に対する併用 strategy のlimitationが残る。(iv) First-line設定での crizotinib との直接比較 (NCT02075840) の結果待ちであり、これによりalectinib の最適 line が決定される。これらのfuture researchを経て、ALK陽性NSCLCのprecision medicine paradigm が完成へ向かう。
方法
本試験 (NCT01871805) はphase 2、単群、非盲検、多施設共同試験である。対象は18歳以上、ECOG PS 0-2、FDA承認FISH検査でALK陽性が確認されstage IIIB/IVのNSCLC、crizotinib後進行例 (最低1週間 washout)、化学療法歴の有無は問わず。脳・髄膜転移は無症候性で神経学的安定であれば包含。Alectinib 600 mgを1日2回経口投与、21日サイクルで疾患進行・忍容不能毒性・同意撤回まで継続。減量は150 mg刻みで2段階まで (450 mg BID → 300 mg BID) 許容。主要評価項目はIRC (BioClinica) 評価によるRECIST v1.1 全身ORR (response-evaluable集団: baselineで測定可能病変ありかつ少なくとも1回投与を受けた症例)。副次評価項目はIRC評価頭蓋内ORR・頭蓋内disease control・CNS進行 (neuroradiologist別IRCがRECISTおよびRANO (Response Assessment in Neuro-Oncology) で評価)、PFS、OS、safety、患者報告アウトカム (EORTC QLQ-C30/QLQ-LC13)。CTおよび脳MRIをbaselineと以後6サイクルまで6週ごと、その後9週ごとに実施。生存解析はKaplan-Meier法、SAS v9.2使用。サンプルサイズは85例 (両側 95% CI 下限が35%超となる検出力80%)。Primary cutoff 2014年10月24日、updated cutoff 2015年4月27日。