• 著者: Omid Hamid, Caroline Robert, Adil Daud, F. Stephen Hodi, Wen-Jen Hwu, Richard Kefford, Jedd D. Wolchok, Peter Hersey, Richard W. Joseph, Jeffrey S. Weber, Roxana Dronca, Tara C. Gangadhar, Amita Patnaik, Hassane Zarour, Anthony M. Joshua, Kevin Gergich, Jeroen Elassaiss-Schaap, Alain Algazi, Christine Mateus, Peter Boasberg, Paul C. Tumeh, Bartosz Chmielowski, Scot W. Ebbinghaus, Xiaoyun Nicole Li, S. Peter Kang, Antoni Ribas
  • Corresponding author: Antoni Ribas (Department of Medicine, Division of Hematology-Oncology, Jonsson Comprehensive Cancer Center, University of California, Los Angeles)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2013
  • Epub日: 2013-06-02
  • Article種別: Original Article
  • PMID: 23724846

背景

PD-1受容体はT細胞の抑制性受容体であり、長期的な抗原曝露下で発現が亢進し、T細胞のエフェクター機能を制限する。その主要なリガンドであるPD-L1(B7-H1、CD274)は、腫瘍細胞や腫瘍浸潤マクロファージ上に高頻度で発現する。もう一つのリガンドであるPD-L2(B7-DC、CD273)は、主に抗原提示細胞に発現する。腫瘍モデルでは、PD-1は腫瘍内で発現するPD-L1との結合を介してT細胞応答のエフェクター相を負に制御することが示されている。このPD-1/PD-L1経路の阻害は、腫瘍特異的T細胞の細胞傷害性機能を特異的に解放し、他の免疫チェックポイント阻害剤と比較して全身性の毒性が少ない可能性が示唆されてきた (Pardoll et al. NatRevCancer 2012)。

先行研究では、抗CTLA-4抗体であるイピリムマブが転移性メラノーマ患者の全生存期間を改善することが示されているが、その効果は一部の患者に限られ、免疫関連有害事象(irAEs)の発生も課題であった (Hodi et al. NEnglJMed 2010Robert et al. NEnglJMed 2011)。一方、抗PD-1抗体ニボルマブや抗PD-L1抗体BMS-936559の第I相試験では、進行メラノーマ、肺癌、腎細胞癌などで顕著な抗腫瘍活性と1年を超える持続的な奏効が報告され、PD-1/PD-L1軸が有望な治療標的であることが確立された (Brahmer et al. JClinOncol 2010Brahmer et al. NEnglJMed 2012Topalian et al. NEnglJMed 2012)。これらの研究は、PD-1阻害がCTLA-4阻害とは異なる作用機序を持つ可能性を示唆し、より良好な安全性プロファイルが期待された。

Lambrolizumab(MK-3475、後のペムブロリズマブ)は、高選択性のヒト化IgG4-κ型抗PD-1モノクローナル抗体である。この抗体は、T細胞上のPD-1受容体の負の免疫制御シグナルをブロックするように設計されており、Fc受容体結合や補体活性化を回避するためのIgG4-S228P安定化変異が導入されている。これにより、抗体がT細胞に結合した際の細胞傷害性作用を避けることが可能となる。先行する固形癌患者を対象とした用量漸増第I相試験では、1 mg/kg、3 mg/kg、10 mg/kgを2週間ごとに投与しても最大耐用量(MTD)に到達せず、安全性と臨床的奏効が確認されていた。しかし、進行メラノーマ患者におけるより詳細な安全性プロファイルと抗腫瘍活性、特にイピリムマブ前治療の有無による影響については、まだ十分に検討されておらず、この領域には知識のギャップが残されていた。イピリムマブ治療後の患者群におけるPD-1阻害の効果や、異なる用量スケジュールにおける最適な安全性と有効性のバランスに関するデータは不足しており、この未解明な部分を明らかにし、PD-1阻害の臨床的有用性をさらに確立することが本研究の目的である。

目的

本研究の主要目的は、進行メラノーマ患者における抗PD-1抗体lambrolizumab(MK-3475、後のペムブロリズマブ)の安全性プロファイルを評価することである。副次目的として、イピリムマブによる前治療歴の有無にかかわらず、lambrolizumabの抗腫瘍活性を評価することも含まれる。具体的には、3つの異なる投与スケジュール(10 mg/kgを2週間ごと、10 mg/kgを3週間ごと、2 mg/kgを3週間ごと)における安全性と有効性を比較検討し、各用量レジメンの最適なバランスを探索することを目的とした。これにより、進行メラノーマに対するPD-1阻害療法の臨床的意義を確立し、今後の開発に向けた基礎データを提供することを目指した。また、治療反応性のバイオマーカーを探索するための組織検体解析も実施された。

結果

患者特性: 登録された135例の進行メラノーマ患者のベースライン特性は、各治療群間で類似していた(Table 1)。患者の年齢中央値は60歳であった。50%以上の患者がM1c病期(内臓転移)を有し、約25%で乳酸脱水素酵素(LDH)値が高値であり、約9%が脳転移の既往を有していた。これらはいずれも進行メラノーマにおける予後不良因子として認識されている。イピリムマブ既治療の48例中90%(43例)が3回以上のイピリムマブ投与を受けており、最終イピリムマブ投与からlambrolizumab開始までの中央値は23週(範囲6~83週)であった。

安全性プロファイル: Lambrolizumabに関連すると考えられる有害事象は、大部分がGrade 1または2であり、忍容性が良好であることが示された(Table 2)。全135例中、79%が何らかの薬物関連有害事象を報告し、13%がGrade 3または4の薬物関連有害事象を報告した。最も頻繁に報告された治療関連有害事象は、疲労(fatigue)、発疹(rash)、掻痒症(pruritus)、下痢(diarrhea)であった。これらの症状の95%以上はGrade 1または2であった。Grade 3または4の掻痒症は1%、発疹は2%に報告された。治療関連のGrade 3有害事象は少数であり、ALT/AST上昇、疲労、発疹がそれぞれ10%未満であった。Grade 4の有害事象は稀であった。免疫関連有害事象としては、甲状腺機能低下症(8%)、肝炎(1%)、肺炎(4%)、大腸炎などが少数報告されたが、これらは標準的な管理で対応可能であった。治療中止に至った有害事象は限定的であった。10 mg/kgを2週間ごとに投与したコホートで、全体的な治療関連有害事象の発生率が最も高かった(23% vs 4% [10 mg/kg 3週ごと] および 9% [2 mg/kg 3週ごと])。

全体奏効率(中央放射線学的評価、RECIST v1.1): 中央放射線学的評価(RECIST v1.1)による全用量コホートの確認済み奏効率は38%(95% CI, 25-44)であった(Table 3)。安定疾患(stable disease)を含む疾患制御率も高頻度で観察された。治験担当医評価(免疫関連奏効基準)では、全奏効率がさらに高く、初期進行後に腫瘍が退縮する症例も含まれた。測定可能病変を有する117例中、77%の患者で腫瘍量の減少が認められた(Figure 1A)。未確認奏効が8例存在し、そのうち6例はデータカットオフ時点で確認スキャンを待機中であった。

用量・スケジュール別奏効率: 確認済み奏効率は、10 mg/kgを2週間ごとに投与したコホートで最も高く52%(95% CI, 38-66)であった。10 mg/kgを3週間ごと、および2 mg/kgを3週間ごとに投与したコホートでは、それぞれ37%(95% CI, 24-52)および25%(95% CI, 13-41)と中程度の奏効率が認められた。これは用量依存的な傾向を示唆している。

イピリムマブ前治療の有無による奏効率: 確認済み奏効率は、イピリムマブ既治療例で38%(95% CI, 23-55)、イピリムマブ未治療例で37%(95% CI, 26-49)であり、両群間に統計学的に有意な差は認められなかった(Table 3、Figure 1A)。これは、CTLA-4阻害に失敗した患者においても、PD-1阻害が独立して有効である可能性を示唆する。

奏効の持続性および生存期間: 奏効が確認された52例中42例(81%)が、2013年3月の解析時点で治療を継続中であった(Figure 1B)。奏効期間の中央値は、解析時点(中央フォローアップ期間11ヶ月)で未到達であった。全135例における無増悪生存期間(PFS)の中央値は7ヶ月を超えた。全生存期間(OS)の中央値は、解析時点で未到達であった。奏効の大部分は、初回画像評価時(12週目)に観察された。初期評価で安定疾患であった17例が、治療継続により持続的な客観的奏効を示し、1例は治療開始後48週でRECISTによる部分奏効を達成した。治療中止に至った患者のうち5例は疾患進行によるものであった。

バイオマーカー解析: 退縮した病変の生検組織では、CD8陽性細胞傷害性Tリンパ球の密な浸潤が認められた(Figure 2Aおよび2B)。これは、lambrolizumabの作用機序と一致する所見である。一部の患者では、初期の腫瘍量増加後に遅れて奏効が認められるケースがあり(Figure 2Cおよび2D)、これは免疫関連奏効のパターンと合致する。薬物動態解析では、lambrolizumabの血清濃度は、2 mg/kgを3週間ごとに投与した患者では10 mg/kgを3週間ごとに投与した患者と比較して約5分の1に低かった。定常状態でのトラフ濃度は、10 mg/kgを2週間ごとに投与した患者で、3週間ごとに投与した患者よりも20%高かった。これはlambrolizumabの半減期が約2~3週間であることと一致する。

考察/結論

本研究は、進行メラノーマ患者に対する抗PD-1抗体lambrolizumab(MK-3475、後のペムブロリズマブ)の画期的な第I相拡大コホートデータを提供し、その高い有効性と良好な安全性プロファイルを確立した。全用量コホートにおける確認済み奏効率は38%であり、特に10 mg/kgを2週間ごとに投与したコホートでは52%と高い奏効率が示された。これは、従来の免疫療法(高用量インターロイキン-2、インターフェロンアルファ、抗CTLA-4抗体)における奏効率(10~15%)と比較して顕著な改善であり、PD-1阻害の新規性を示すものである。

先行研究との違い: 本研究で示されたlambrolizumabの安全性プロファイルは、抗CTLA-4抗体イピリムマブと比較して、免疫関連有害事象の発生率が低く、そのスペクトラムも異なることが示唆された。これは、PD-1阻害が腫瘍特異的T細胞により標的を絞った効果を持つことによる、異なる作用機序を反映していると考えられる (Ribas et al. NEnglJMed 2012)。また、イピリムマブ既治療例と未治療例で同等の奏効率が達成されたことは、CTLA-4阻害に失敗した患者においてもPD-1阻害が独立して有効である可能性を示唆し、異なる抵抗性メカニズムを持つ免疫チェックポイント阻害剤の逐次使用が有効である可能性を示唆する。これは、これまでの治療戦略とは対照的な知見である。

新規性: 本研究は、進行メラノーマ患者において、lambrolizumabが持続的な腫瘍退縮を誘導し、その奏効の81%が解析時点で持続していたことを初めて実証した。これは、他の免疫療法で観察される長期的なプラトー形成と同様の現象がPD-1阻害でも期待できることを示唆する新規な発見である。また、初期の腫瘍量増加後に遅れて奏効が認められる免疫関連奏効のパターンも確認され、PD-1阻害における腫瘍評価の特殊性を浮き彫りにした。

臨床応用: 本知見は、進行メラノーマ治療におけるPD-1阻害療法の臨床的有用性を強く支持するものである。良好な安全性プロファイルと高い奏効率、そして奏効の持続性は、lambrolizumabが新たな標準治療となりうる可能性を示唆している。この結果は、その後の大規模臨床試験(KEYNOTE-001、KEYNOTE-002、KEYNOTE-006)へと繋がり、ペムブロリズマブが2014年に進行メラノーマでFDAの迅速承認を取得する基盤となった。さらに、非小細胞肺癌(NSCLC)領域においても、本論文後のKEYNOTE-001 NSCLC拡大コホートを経て、KEYNOTE-024やKEYNOTE-189などの試験で連続的に良好なデータが報告され、ペムブロリズマブがファーストラインNSCLCの標準治療となる道を拓いた。これらの成果は、本研究が免疫チェックポイント阻害剤時代の幕開けを象徴する、極めて重要な臨床的意義を持つ論文であることを示している。

残された課題: 今後の検討課題として、異なる用量スケジュール間の最適なバランスをさらに調査するための無作為化比較試験が必要である。特に、10 mg/kgを2週間ごとと3週間ごとで奏効率に差が見られたことから、これらの用量間の比較は重要である。また、PD-1阻害に対する抵抗性メカニズムの解明や、バイオマーカーによる奏効予測因子の同定も重要な今後の研究方向性である。本研究は第I相拡大コホートであり、より大規模な患者集団での長期的な安全性と有効性の確認が残された課題である。

方法

本研究は、多施設共同の非盲検第I相拡大コホート試験(Part B、ClinicalTrials.gov識別子:NCT01295827)として実施された。2011年12月1日から2012年9月6日までに、測定可能な転移性または局所進行切除不能メラノーマ患者135例が登録された。患者は18歳以上で、良好な全身状態(ECOGパフォーマンスステータス0または1)と臓器機能を有することが適格基準とされた。イピリムマブ未治療コホートは、2レジメン以下の全身療法歴がある患者に限定された。イピリムマブ既治療コホートの患者は、イピリムマブ関連の有害事象が完全に消失しており、重度の免疫関連有害事象の既往がないことが条件とされた。最終イピリムマブ投与からlambrolizumab開始までの期間は中央値23週(範囲6~83週)であった。

Lambrolizumabは、10 mg/kgを2週間ごと、10 mg/kgを3週間ごと、または2 mg/kgを3週間ごとのいずれかの用量で、30分間の静脈内点滴として投与された。治療は、疾患進行の確認、許容できない毒性の発現、または同意撤回まで継続された。初回スキャンで疾患進行が示された患者でも、少なくとも1ヶ月後の確認スキャンが得られるまで治療継続が許容された。ベースラインでの生検が必須であり、バイオマーカー研究のために治療中の生検も任意で実施された。安全性評価(臨床検査および臨床症状)は、ベースライン時および各投与前に実施された。前投薬は行われなかった。有害事象の評価は、NCI-CTCAE v4.0に基づいて行われた。

腫瘍評価は、初回投与から12週後に最初に行われ、その後12週ごとに実施された。腫瘍奏効は、独立中央放射線学的評価(RECIST v1.1)と治験担当医評価(免疫関連奏効基準)の2つの基準で評価された。主要評価項目は、治験担当医評価による免疫関連奏効基準に基づく全奏効率であった。RECIST v1.1による中央評価では、ベースラインで測定可能病変があり、少なくとも1回の治療後評価を受けた117例が有効性解析に含まれた。全135例を対象に、治験担当医評価による全奏効、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)が解析された。データカットオフは2013年2月1日であった。

薬物動態解析のため、治療開始時およびその後約12週ごとに血漿サンプルが採取された。Lambrolizumabの血清濃度は、検証済み電気化学発光アッセイ(定量下限10 ng/mL)を用いて定量された。統計解析には記述統計が用いられ、全奏効率と正確な両側95%信頼区間が算出された。PFSおよびOSはカプラン・マイヤー法を用いて推定された。薬物動態学的パラメータ(Cmax、Cmin、AUC)も評価され、用量依存的な曝露が確認された。