• 著者: David L. Porter, Bruce L. Levine, Michael Kalos, Adam Bagg, Carl H. June
  • Corresponding author: David L. Porter (Division of Hematology and Oncology, University of Pennsylvania, Philadelphia)
  • 雑誌: New England Journal of Medicine
  • 発行年: 2011
  • Epub日: 2011-08-10
  • Article種別: Brief Report / Case Report
  • PMID: 21830940

背景

遺伝子導入技術を用いてT細胞を遺伝子改変し、表面に抗体を安定的に発現させることで、新たな抗原特異性を付与することが可能である。キメラ抗原受容体(CAR)は、特定の抗体の抗原認識ドメインとCD3ζ鎖またはFcγRIタンパク質の細胞内ドメインを単一のキメラタンパク質として組み合わせたものである。CARは内因性T細胞受容体と同様にT細胞活性化を誘導できるものの、これまでの臨床応用における主要な課題は、CAR-T細胞のin vivoでの増殖が限定的であり、臨床効果が不十分であった点である (Sadelain et al. Curr Opin Immunol 2009)。

T細胞の共刺激ドメインの追加により、CARを介したT細胞応答はさらに増強されることが示唆されていた。特に、CD137 (4-1BB) シグナル伝達ドメインの組み込みは、前臨床モデルにおいて、CD3ζ鎖単独の場合と比較して、CARの抗腫瘍活性とin vivoでの持続性を有意に増加させることが報告されていた (Milone et al. MolTher 2009; Carpenito et al. ProcNatlAcadSciUSA 2009)。本研究グループは、HIV由来レンチウイルスベクターを用いて、B細胞抗原CD19に特異的なCAR(FMC63由来scFv-CD8αヒンジ/TM-4-1BB-CD3ζ)をコードするCART19を開発した。

ほとんどのがんにおいて、標的となる腫瘍特異的抗原は十分に定義されていないが、B細胞腫瘍においてはCD19が魅力的な標的である。CD19の発現は正常B細胞、悪性B細胞、およびB細胞前駆細胞に限定されている (Uckun et al. Blood 1988)。慢性リンパ性白血病(CLL)は、標準的な化学療法に対して奏効期間が短いことが知られており、特にTP53欠失を有するCLLは予後不良であり、同種骨髄移植のみが唯一の長期寛解手段であった (Döhner et al. Blood 1995; Gribben et al. Biol Blood Marrow Transplant 2011)。しかし、同種移植は高齢患者で特に重篤な慢性移植片対宿主病を伴うことが多く、かなりの罹患率を伴うという課題があった (Sorror et al. Blood 2008)。

これまでのCAR-T細胞の臨床試験では、客観的な腫瘍反応は限定的であり、改変T細胞のin vivo増殖も持続しなかった (Kershaw et al. ClinCancerRes 2006; Till et al. Blood 2008; Pule et al. NatMed 2008)。特に、CD28共刺激ドメインを含むCD19標的CARの臨床試験では、一過性の腫瘍反応が報告されたものの、CARは循環から急速に消失するという課題が残されていた (Brentjens et al. Mol Ther 2010)。このin vivoでの持続性不足が、CAR-T細胞療法の効果を制限する主要なギャップとして認識されていた。本研究は、この課題を克服するため、4-1BB共刺激ドメインを組み込んだ第2世代CAR-T細胞の臨床的有効性を評価することを目的とした。

目的

本研究の目的は、難治性・進行性慢性リンパ性白血病(CLL)患者(特にTP53欠失を有する予後不良例)に対し、CD19特異的キメラ抗原受容体(CAR)とCD137(4-1BB)共刺激ドメインを組み合わせたCART19細胞を投与した際の免疫学的および臨床的効果、ならびにin vivoでの動態を評価することである。具体的には、CART19細胞のin vivoでの増殖、持続性、抗腫瘍効果、および安全性プロファイルを詳細に解析し、これまでのCAR-T細胞療法の課題であった限定的なin vivo増殖と不十分な臨床効果を克服できるか否かを検証する。特に、低用量での投与における効果と、腫瘍崩壊症候群(TLS)の発症機序および管理についても検討する。

結果

CART19細胞の劇的なin vivo拡大と持続性: CART19細胞のDNAは、最初の輸注後Day 1から末梢血で検出され始めた。Day 21までにin vivoで3 log(1000倍以上)の劇的な拡大を記録した (Figure 3A)。ピーク時には、循環リンパ球の20%以上がCART19細胞で占められ、倍加時間は約1.2日であった。これらのピークレベルは、全身症状、腫瘍崩壊症候群(TLS)、および血清サイトカインレベルの上昇と時期的に一致した。CART19細胞は輸注後6ヶ月間、ピークレベルの約1/10のレベルで末梢血中に高レベルで持続的に検出され、消失半減期は31日であった。骨髄においても、CART19細胞は最初の輸注後Day 23から検出され、少なくとも6ヶ月間持続し、消失半減期は34日であった (Figure 3B)。骨髄中のCART19細胞の最高レベルは、Day 23の最初の評価時に確認され、サイトカイン分泌プロファイルによって示される免疫応答の誘導と一致した。これは、先行するCD28ドメイン含有CAR試験での限定的な拡大と対照的に、4-1BBシグナルによる持続的増殖が初めて臨床的に示された重要な所見である。

完全寛解の達成と持続: 臨床的反応は、輸注後Day 14に出現した悪寒および低度発熱(グレード2の倦怠感を伴う)を経て明確になった。Day 28には触知可能なリンパ節が消失した。Day 23の骨髄生検では、CLL細胞の消失が確認された (Figure 1C)。核型は15細胞中15細胞で正常(46,XY)であり、FISH検査では200細胞中198細胞でTP53欠失が陰性であった。フローサイトメトリー解析では、残存CLL細胞は検出されず、B細胞も検出不能(CD5+CD10-CD19+CD23+リンパ球ゲート内の1%未満)であった。輸注後Day 31のCTスキャンでは、全身のリンパ節腫大の消失が確認された (Figure 1D)。3ヶ月および6ヶ月後の評価でも、身体診察で触知可能なリンパ節はなく、CTスキャンおよび骨髄検査により完全寛解が持続していることが示された。報告時点(輸注後10ヶ月)においても寛解は継続中であった。

腫瘍崩壊症候群(TLS)の発症と管理: 輸注後Day 22に腫瘍崩壊症候群(TLS)が発症した (Figure 1B)。尿酸値は10.6 mg/dL(基準値 2.4-4.7 mg/dL)、リン酸値は4.7 mg/dL、乳酸脱水素酵素(LDH)値は1130 U/L(基準値 98-192 U/L)に上昇した。急性腎障害の兆候として、クレアチニン値が2.60 mg/dL(ベースライン値 <1.0 mg/dL)に上昇した。患者は入院し、輸液療法とラスブリカーゼで治療された。尿酸値は24時間以内に、クレアチニン値は3日以内に正常範囲に戻り、入院4日目に退院した。LDH値は徐々に減少し、翌月には正常化した。TLSはCAR-T細胞の強力な腫瘍殺傷活性の証拠であると同時に、高腫瘍量患者における大量の腫瘍崩壊リスクを示す初の臨床的観察であった。

サイトカイン動態とTLSの一致: 血清中のIFN-γ、CXCL9、CXCL10、およびIL-6レベルは、輸注後Day 17からDay 23にかけてピークを示し、ベースラインと比較してIFN-γは最大160倍に上昇した (Figure 2A-D)。これらのサイトカインレベルの時間的上昇は、TLSの臨床症状と時期的に一致した。骨髄液中のサイトカインも同様の上昇を示し、IFN-γ、CXCL9、IL-6、可溶性IL-2受容体の有意な増加がDay 23にピークに達した (Figure 2E)。これらの骨髄サイトカインの上昇は、骨髄からの白血病細胞の排除と一致していた。血清および骨髄中のTNF-αレベルは変化がなかった。これらのサイトカインパターンは、後のサイトカイン放出症候群(CRS)の概念の前臨床的基盤を提供した。

安全性プロファイルと限定的毒性: 細胞輸注に関連する急性毒性は認められなかった。唯一の重篤な(グレード3または4)有害事象は、上記のグレード3のTLSであった。患者はベースラインでグレード1のリンパ球減少症を呈しており、Day 1から治療後10ヶ月の最終フォローアップまでグレード2または3のリンパ球減少症が持続した。Day 19には絶対リンパ球数140 cells/mm³のグレード4リンパ球減少症が記録されたが、Day 22以降は390〜780 cells/mm³(グレード2または3)で推移した。Day 19からDay 26にかけて一過性のグレード1血小板減少症(血小板数 98,000〜131,000 cells/mm³)、Day 17からDay 33にかけてグレード1または2の好中球減少症(絶対好中球数 1090〜1630 cells/mm³)が認められた。その他の研究治療に関連する可能性のある症状として、輸注後Day 17に発現しDay 33までに自然軽快したグレード1および2の肝酵素(アミノトランスフェラーゼおよびアルカリホスファターゼ)上昇があった。グレード1および2の全身症状として、発熱、悪寒、発汗、筋肉痛、頭痛、倦怠感が報告された。グレード2の低ガンマグロブリン血症は、CD19特異的な正常B細胞の消失(B細胞アプラジア)によるものであり、静脈内免疫グロブリン(IVIG)輸注により補正可能であった。前処置レジメン(ペントスタチン+シクロホスファミド)に関連する標準的な血球減少も管理可能な範囲であった。

考察/結論

本報告は、CD137 (4-1BB) シグナル伝達ドメインを含む第2世代CAR-T細胞(CART19)が、先行研究で用いられたCD28ドメイン含有CAR-T細胞と比較して、桁違いのin vivo拡大能(1000倍以上)と持続性(6ヶ月以上)を示すことを初めて実証した。この持続的な増殖は、CAR-T細胞がin vivoで「記憶様」T細胞として機能する可能性を示唆しており、後のKymriah (tisagenlecleucel) 開発の直接的な臨床的根拠となった。

新規性: 特筆すべき点は、ごく低用量(1.5×10⁵ cells/kg)のCART19細胞投与が、先行試験の数桁少ない用量にもかかわらず強力な抗腫瘍効果を示したことである。また、細胞免疫療法後に腫瘍崩壊症候群(TLS)が発症したことはこれまで報告されておらず、本研究で初めて臨床的に観察された。これはCAR-T細胞の強力な腫瘍殺傷活性の証拠であると同時に、高腫瘍量患者での大量腫瘍崩壊リスクを示す新規の副作用であり、今後の試験デザインに対して重要な注意喚起となった。

先行研究との違い: これまでのCAR-T細胞試験では、in vivoでの増殖が限定的で臨床効果も不十分であったが、本研究のCART19細胞は、TP53欠失という予後不良因子を持つ難治性CLL患者において、持続的な完全寛解をもたらした点で、これまでの報告とは対照的な結果を示した。特に、Milone et al. MolTher 2009Carpenito et al. ProcNatlAcadSciUSA 2009による前臨床データが、4-1BBドメインの重要性を示唆していたが、本研究はそれを臨床で初めて確認した。

臨床応用: 本研究は、遺伝子改変された自家T細胞が、TP53欠失を有するCLLのような難治性疾患患者において、同種骨髄移植に伴う高い罹患率を回避しつつ、長期寛解を誘導できる可能性を示唆する。これは、B細胞腫瘍に対するCD19標的CAR-T細胞療法の臨床応用における強力な根拠を提供するものである。本治療法は、HLA非拘束的な腫瘍認識を可能にするため、幅広い組織型のがんに対して「既製の」CARを構築できるという臨床的有用性を持つ。

残された課題: 今後の検討課題として、CART19細胞の長期的なB細胞欠損が患者に与える影響、および正常B細胞の回復の有無が挙げられる。リツキシマブ治療ではB細胞が数ヶ月で回復することが報告されているが、抗B細胞T細胞がin vivoで持続する場合に同様の回復が起こるかは不明である。また、前処置化学療法がCAR-T細胞の効果を増強する可能性(生着促進、腫瘍細胞への遊走促進、ストレスを受けた腫瘍細胞の殺傷能増強など)が示唆されているが、外因性サイトカインの追加がCAR-T細胞の活性をさらに高めるかどうかは今後の研究で明らかにする必要がある。本研究は単一症例報告であるため、より大規模なコホートでの検証が残された課題である。

方法

本研究は、Penn試験(ClinicalTrials.gov登録番号:NCT01029366)の一環として実施された。対象患者は、1996年にステージI CLLと診断され、その後進行し、リツキシマブ+フルダラビン(2回)、ベンダムスチン±リツキシマブなど多数の治療ラインを経て増悪した難治性CLL患者1名である。この患者は、FISH検査で200細胞中170細胞にTP53遺伝子欠失(17p欠失)が確認されており、予後不良因子を有していた。

患者の自家T細胞は白血球アフェレーシスにより採取され、凍結保存された。その後、HIV由来の自己不活性化レンチウイルスベクター(GeMCRIS 0607-793)を用いて、CD19特異的CAR(FMC63由来scFv-CD8αヒンジ/TM-4-1BB-CD3ζ)を発現するように形質導入された。T細胞調製方法は既報の通りである (Porter et al. Blood 2006)。形質導入されたT細胞の割合は5%であった。

細胞輸注の4日前、患者はリンパ球除去を目的とした化学療法として、ペントスタチン(4 mg/m²)とシクロホスファミド(600 mg/m²)をリツキシマブなしで投与された (Lamanna et al. J Clin Oncol 2006)。この前処置は、CAR-T細胞の生着と腫瘍細胞への遊走を促進する可能性が示唆されている (Klebanoff et al. Trends Immunol 2005)。化学療法3日後の細胞輸注前には、骨髄は過形成性であり、約40%がCLL細胞に浸潤していた。CLL細胞はカッパ軽鎖、CD5、CD19、CD20、CD23を発現していた。細胞遺伝学的解析では、2つの異なるクローンが確認され、いずれも染色体17pおよびTP53遺伝子座の欠失を示した。

化学療法4日後、合計3×10⁸個のT細胞が輸注された。このうち形質導入されたCART19細胞は1.42×10⁷個(体重1kgあたり1.46×10⁵個)であり、この低用量は先行研究の数桁少ない用量であった。細胞は3日間に分割して静脈内輸注された(Day 1に10%、Day 2に30%、Day 3に60%)。輸注後のサイトカイン投与は行われなかった。

CART19細胞のin vivo動態は、血液および骨髄中のCAR遺伝子DNAを定量PCRで検出することにより評価された。定量下限はゲノムDNA 1マイクログラムあたり25コピーであった。血清および骨髄液中の可溶性サイトカイン因子は、Luminexビーズアレイ技術(Life Technologies社製試薬)を用いて定量された。臨床的反応は、身体診察、CTスキャン、骨髄生検、およびフローサイトメトリーにより評価された。安全性プロファイルは、有害事象のグレード分類(NCI-CTCAE v3.0)に基づいて評価された。